就業規則を作成し運用する上で重要な労務管理について解説
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■労災保険の特別加入について 


■特別加入制度とは?

労災保険は、労働者の業務災害に対して保険給付を行う制度ですが、(中小企業の社長など)労働者と同じような作業をしているといった実情や災害の発生状況などからみて、実質的には労働者として保護することが望ましいされる人に対して任意に労災保険への加入を認めているのが特別加入制度です。

■特別加入できる人

■中小企業の事業主等
1.特別加入の範囲
次の事業及び規模の事業主等が特別加入することができます。
業種 常時使用する労働者数
金融業・保険業・不動産業・小売業 50人以下
卸売業・サービス業 100人以下
上記以外の業種 300人以下

2.特別加入手続き
中小企業の事業主等が、特別加入する場合は、次の要件を満たしたうえで、労働保険事務組合を通じて労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に「特別加入申請書」を提出します。
なお、特別加入申請に係る都道府県労働局長の承認の日は、申請日の翌日から起算して14日の範囲内において特別加入申請者が加入を希望する日となります。

要件
雇用する労働者について労災保険の保険関係が成立していること
労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託していること
原則として事業主及び家族従事者等のすべて包括して加入すること

(参考)
特別加入する人が次の特定業務に従事する場合は、「特別加入申請書」に業務歴を記入し、特定業務に従事した期間(通算期間)が一定期間を超える場合は、健康診断結果を提出する必要があります。

特定業務 従事した期間 健康診断の種類
粉じん作業を行う業務 3年 じん肺健康診断
振動を与える業務 1年 振動障害健康診断
鉛業務 6ヵ月 鉛中毒健康診断
有機溶剤業務 6ヵ月 有機溶剤中毒健康診断


一人親方等
1.特別加入の範囲
次の事業を労働者を使用しないで行う自営業者等が特別加入することができます。
自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業(個人タクシー業者など)
建設の事業(大工、左官など)
漁船による水産動植物の採捕の事業(漁師など)
林業の事業
医薬品の配置販売の事業
再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業(廃品回収業者など)

2.特別加入手続き
一人親方等が、特別加入する場合は、次の要件を満たしたうえで、一人親方等の団体が労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に「特別加入申請書」を提出します。

なお、特別加入申請に係る都道府県労働局長の承認の日は、申請日の翌日から起算して14日の範囲内において特別加入申請者が加入を希望する日となります。

要件
一人親方等が組織した団体を通じて特別加入すること(個人ごとには加入できません)
家族従事者等すべてを包括して加入すること

(参考)
一人親方等が特定業務に従事する場合の取扱いは、中小企業の事業主等の場合と同様です。


■特定作業従事者
1.特別加入の範囲
特定作業従事者として特別加入することができるのは次の者とされています。

特定農作業従事者
指定農業機械作業従事者
職場適応訓練従事者
事業主団体等委託訓練従事者
家内労働者及びその補助者
労働組合等の常勤役員
介護作業従事者

※家内労働者及びその補助者であっても、年少者及び女性で就業制限されている作業に従事している人については特別加入することができません。

2.特別加入手続き
一人親方等の場合と同様です。

■海外派遣者
1.特別加入の範囲
次に該当する海外派遣者が特別加入することができます。

開発途上地域に対する技術協力の実施の事業を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人
日本国内で行われる事業から派遣されて海外で行われる事業に従事する人

※海外の派遣先の事業に事業主として派遣される場合は、原則として特別加入の対象になりません。ただし、派遣先の事業の規模が次に該当する場合は例外的に特別加入することが認められています。
業種 常時使用する労働者数
金融業・保険業・不動産業・小売業 50人以下
卸売業・サービス業 100人以下
上記以外の業種 300人以下

2.特別加入手続き
海外派遣者が特別加入する場合は、次の要件を満たしたうえで、国内の派遣元の団体又は事業主が労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に「特別加入申請書」を提出します。

なお、特別加入申請に係る都道府県労働局長の承認の日は、申請日の翌日から起算して14日の範囲内において特別加入申請者が加入を希望する日となります。

要件
国内の派遣元の団体又は事業主の事業について労災保険の保険関係が成立していること
国内の派遣元の団体又は事業主の事業が有期事業でないこと

※派遣先の海外での事業が有期事業であっても特別加入することができます。
※海外派遣者の場合はすべてについて特別加入させる必要はなく、個別に任意で加入させることも可能です。

■特別加入の地位の消滅

1.中小企業の事業主等及び海外派遣者については、いつでも政府の承認をうけて脱退することができます。

2.一人親方等の団体や特定作業従事者の団体については、いつでも政府の承認をうけて、団体の保険関係を消滅させることができます。

3.特別加入の要件を満たさなくなった場合は、自動的に特別加入の地位が消滅します。

4.中小企業の事業主等、一人親方等の団体や特定作業従事者の団体、海外派遣者が関係法令の規定に違反した場合は、特別加入の承認が取り消される場合があります。

■一般の労働者と特別加入者の相違点

1.保険給付について
特別加入者については、次の点が異なります。

1.二次健康診断等給付は行なわれません。

2.休業(補償)給付の支給要件のうち「賃金を受けないこと」の要件が問われません。

3.次に該当する人については住居と従業場所との関係が明確でないために「通勤災害」に関する保険給付は行なわれません。
個人タクシー業者及び個人貨物運送業者
個人水産業者
特定農作業従事者
指定農業機械作業従事者
家内労働者等

4.通勤災害の場合であっても一部負担金を負担する必要がありません。


2.給付基礎日額について
特別加入者の所得水準に見合った適正な額を本人の希望で申請し、都道府県労働局長が決定した額が給付基礎日額となります。

※給付基礎日額とは?
保険の給付をうける場合に、受給できる金額を算定する場合の基礎となるものです。なお、給付基礎日額を高く設定した場合は保険給付の額も多くなりますが、当然保険料も高くなります。

なお、給付基礎日額は、3,500円から20,000円までの13階級(家内労働者等については2,000円、2,500円、3,000円を加えた16階級)の中から選択することになります。

(参考)
一般労働者の給付基礎日額は原則として労働基準法の平均賃金賃金相当額になります。

平均賃金の計算式
(算定発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額)÷(算定事由発生日以前3ヶ月間の総日数)


3.保険料について
特別加入者の保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額に365を乗じたもの)にそれぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものとなります。

なお、年度途中において、新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、当該年度内の特別加入月数(1ヵ月未満の端数は、1ヵ月として計算します。)に応じた保険料算定基礎額により保険料を算定することになります。

■注意事項

一般の労働者と違って特別加入者の場合は、就業時間中の災害であっても保険給付が受けられない場合があるので、加入時によく説明を聞いて、保険給付が行われない場合についてしっかり理解しておくことが重要です。

(事例)
中小事業の事業主等は、次の要件に該当する場合にしか保険給付をうけることができません。よって、労働者全員が退社した後に社長が1人で作業を行っていて負傷した場合などは、保険給付がおこなわれません。

申請書別紙の「業務の内容」欄に記載された労働者の所定労働時間内に行われる業務及びこれに直接附帯する行為を行う場合(ただし、その行為が事業主の立場において行われる業務を除きます。)
労働者の時間外労働又は休日労働に応じて就業する場合
労働者の就業時間に接続して業務の準備又は後始末を中小事業主等のみで行う場合
労働者の就業時間内における事業場施設の利用中及び事業場施設内で行動中の場合
事業の運営のために直接必要な業務(事業主の立場において行われる業務を除きます。)のために出張する場合
通勤途上で次に掲げる場合
1.事業主が労働者のために用意した通勤用のマイクロバス等を利用している場合
2.台風や火災のような突発事故等による予定外の緊急出勤の途上にある場合
事業の運営に直接必要な運動競技会、その他の行事について労働者を伴って出席する場合

参考資料 厚生労働省HP「特別加入制度のしおり」

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