労働トラブル事例とその対策について解説
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■退職後に不正が発覚した場合に支給済の退職金の返還請求できるか? 


■労働トラブル対策

自己都合退職した労働者に、退職金を支給した後になって、会社のお金を横領していた事実が発覚した場合に、支給済みの退職金の返還を求めることができるかどうかは、就業規則(退職金規程)にどうのように定められているかによって違ってきます。

退職金規程の退職金不支給事由に「懲戒解雇した場合は、退職金の全部又は一部を支給しない」と定められているだけの場合は、退職金の返還を求めることはできません。

なぜなら、自己都合としての退職届があり、会社側がそれを受理した場合は退職が確定し、会社との雇用関係は消滅しますので、その後に会社のお金を横領している事実が発覚した場合でも、雇用関係が消滅した者に対して懲戒解雇扱いにすることはできないためです。

よって、退職金規程に定められている「懲戒解雇した場合」に該当せず、退職金を不支給扱することはできないという結論になります。

※社長にとってははらわたが煮えくりかえる思いでしょうが、退職した労働者が、反省して自主的に返還を申し出る以外に、退職金を合法的に返還を求めることはできません。(横領の事実が確実ならば、民事訴訟で横領された金銭に対する損害賠償請求をすることは可能です。)

(このような問題を予防するには?)
まず、退職金規程をすぐに変更する必要があります。
具体的には、退職金規程に「懲戒解雇した場合及び退職後であっても懲戒事由に相当する事由が発覚した場合には、退職金の全部又は一部を支給しない。」との文言を追加する必要があります。

この条文を退職金規程に定めることにより、自己都合退職した後に、金銭の横領等の懲戒解雇事由に該当する事実が発覚した場合であっても、退職金を不支給にすることが可能ですし、例え退職金を支払ってしまった後であっても、この規定により退職金請求権自体がありませんので、民法上の不当利得により返還を求めることができます。

返還を求めることを労働者に周知するために、「また、退職金を支給済みの場合は、返還を求めることができる。」との一文を追加しても良いと思います。

(注意点)
金銭横領などの不正行為が発覚した場合でも、本当に退職した労働者の行為なのか、また不正行為自体は事実なのかというような調査を十分に行い、証拠をそろえてから、退職した労働者に確認するというように、慎重に対処する点には、注意が必要です。

退職金の返還請求した後になって、「不正行為が間違いだった」と判明してしまったら、大きな問題に発展する可能性もあります。

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