労働基準法の基礎知識について解説
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■年次有給休暇(法第39条)


■年次有給休暇の要件

使用者は、その雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません。
この規定は、労働者の疲労を回復させ、福祉の充実を図ることを目的として、休日とは別に一定の要件を満たした労働者に対して、有給休暇を与えることを義務づけています。

なお、「継続勤務」とは、会社に在籍した期間をいい、必ずしも出勤した期間のみを意味しているのではありませんので注意が必要です。
(具体例)
定年退職後に引き続き嘱託等として採用している場合
在籍出向をした場合
病気等で長期休職していた者が復職した場合
臨時職員やパートタイマー等を正規職員にした場合

また、「労働日」とは、就業規則や個別の労働契約によって、労働しなければならない日(所定労働日)をいい、「全労働日の8割以上出勤」したかどうかは、「出勤日(扱い日)÷全労働日」で計算します。

(具体例)
全労働日に含まれるもの(出勤扱い)
所定労働日
年次有給休暇を取得した日
業務災害によって休業した日
産前産後休業期間(実際の出産日が予定日より遅れた場合はその期間も含む)
育児介護休業法に基づく育児・介護休業をした日
全労働日に含まないもの
所定休日
休日労働した日
正当な労働争議により労務の提供がなかった日
※生理休暇日については、出勤扱いにするかどうかは労使間の合意により決定することができます。(別に労働日に含めなくても問題ないということです。)

■年次有給休暇の付与日数

■原則
使用者は、1年6ヵ月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して6ヶ月を超えて継続勤務する日から起算した継続勤務年数1年ごとに、10労働日に次の日数を加算した有給休暇を付与しなければなりません。

6ヶ月経過日以後の勤続年数に加算される日数
年数 1年 2年  3年 4年 5年 6年
労働日 1日 2日 4日 6日 8日 10日

※実際の有給休暇付与日数
勤務年数 6月 1年6月  2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

(参考)
有給休暇の時効
有給休暇の時効は2年間です。よって未消化分の有給休暇については翌年に限り繰り越すことができます。
半日単位の付与
労働者が半日単位で有給休暇を請求してきた場合でも、必ずしもこれに応じる必要はありません。労使間の合意で与えるのは問題ありません。

■例外
継続勤務した期間を6ヵ月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の8割未満である者に対しては、当該初日以後の1年間においては有給休暇を与えなくても問題ありません。

(具体例)
入社日からの期間 出勤率 以後1年間の付与日数
入社日から6ヶ月間 8割以上 10労働日
6ヶ月目から1年間 8割以上 11労働日
1年6ヶ月目から1年間 8割未満 0労働日
2年6ヶ月目から1年間 8割以上 14労働日
3年6ヶ月目から1年間 8割未満 0労働日
4年6ヶ月目から1年間 8割以上 18労働日
5年6ヶ月目から1年間 8割以上 20労働日

■年次有給休暇の比例付与

■要件
パートタイマーやアルバイト等であっても、雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した場合には、有給休暇が与えられます。
ただし、所定労働日数が少ない場合には、実際の労働日数に比例した日数の有給休暇が付与されることになります。

なお、比例付与に該当するのは、次の要件をすべて満たしている労働者になります。
週所定労働日数が4日以下(又は年間所定労働日数が216日以下)であること
労働時間が、1週間につき30時間未満であること
※週所定労働日数が4日以下であっても、1週間の労働時間が、30時間以上の労働者には、比例付与ではなく通常の有給休暇を付与することが必要です。

■算定方法

(計算式)

週所定労働日数÷5.2×通常の有給休暇日数

(計算例)
週所定労働日数4日の労働者が、6ヶ月間勤務(8割以上出勤)した場合
4日÷5.2×10労働日=7日

比例付与日数表
週所定労働日数 4 3 2 1
年間所定労働日数 169〜216 121〜168 73〜120 48〜72
6ヶ月 7 5 3 1
1年6ヵ月 8 6 4 2
2年6ヵ月 9 6 4 2
3年6ヵ月 10 8 5 2
4年6ヵ月 12 9 6 3
5年6ヵ月 13 10 6 3
6年6ヵ月 15 11 7 3

■時季指定権と時季変更権

使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季(時季指定権)に与えなければなりません。
ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができます。 (時季変更権

なお、年次有給休暇は、労働基準法の要件に該当すれば、法律上当然に権利が発生しますが、具体的な行使するためには、使用者に取得申請して有給休暇を取得する時季を指定しなければなりません。
そして、使用者は、原則として労働者からの有給休暇取得申請に対して拒否する権利はありません。
しかし、労働者が指定した時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に限り、時季を変更することができます。

■計画的付与

使用者は、労使協定を締結することにより、年次有給休暇のうち5日を超える部分につき、計画的に有給休暇を与えて強制的に取得させることが可能です。
なお、この労使協定については、労働基準監督署長に届出る必要はありません。

しかし、年次有給休暇の計画的付与については、5日を超える部分についてしか行うことができませんので、有給休暇が5日以下しか付与されていない労働者に対しては計画的付与を行うことはできません。

なので、事業場一斉付与の場合などで、どうしても行うときは、休業手当(平均賃金の6割)の支払や付与日数を増やす等の措置が必要になります。

また、計画的付与を実施した場合、計画的に付与することになっている日については労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権の行使ができなくなります。

※計画的付与の方式については、次のようなものがあります。
事業場全体の休業(一斉付与方式
判別の付与(交替制付与方式
取得計画表による個人別付方式

(参考)
労使協定とは?
労使協定とは、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による協定をいいます。

■年次有給休暇中の賃金

使用者は、年次有給休暇中の賃金として、次のいずれかの賃金を支払わなければなりません。
なお、実務上は、どの方式で支払うか就業規則等に定めておきます。
よって労働者個人ごとに上記方式から選択して支払う等の方法はできません。
平均賃金
通常の賃金
健康保険法の標準報酬日額 →労使協定の締結(届出不要)が必要

■年次有給休暇の買い上げ

使用者が年次有給休暇日数の買い上げの約束することや、この約束に基づいて年次有給休暇の日数を減らしたり、年次有給休暇を付与しないことはできません。
しかし、法定日数分を超える有給休暇を付与している場合(例えば6ヶ月間継続勤務で12労働日の有給休暇を付与するなど)に、その超過分の日数については、買い上げても問題はありません。
なお、この場合でも買い上げする義務はありません。

■不利益な取り扱いの禁止

使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければなりません。
なお、不利益な取り扱いには次のようなものがあります。

有給休暇を取得した日を、欠勤扱いにするなどして、賞与の査定時に不利に扱ったり、精勤手当・皆勤手当を減額したりすること
有給休暇を取得しなかった人について、賞与の査定で有利な取り扱いをすること

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