労働基準法の基礎知識について解説
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■労働契約の解除


■解雇(法第18条の2)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効になります。

この規定は、平成16年1月1日に施行された労働基準法の改正で新たに定められました。改正前は、解雇権の濫用について規定されていませんでしたが、従前から判例において解雇するには合理的な事由がなければならないという理論が確立されていましので、この規定が新設されたことによる実質的な変化はありません。

(参考)
■解雇とは?
解雇とは、労働契約を使用者が一方的に将来に向かって解除することをいいます。なお、労働者側からの労働契約の解除は退職といいます。

■解雇の種類
普通解雇 心身の故障のため業務に服することができない場合や業務成績の不振等による解雇
懲戒解雇 服務規程に違反した場合など労働者の非行に対する制裁による解雇
整理解雇 事業縮小や営業不振による人員整理による解雇

判例による整理解雇の4つの要件
人員整理の十分な必要性があること
解雇を回避する為の努力を尽くしたこと
解雇対象者の人選が客観的に公正妥当であること
労働組合や労働者に対して誠意をもって説明及び十分な協議をしたこと

解雇にあたらない場合(退職に該当)

任意退職 労働者からの申出による退職(原則として2週間以上前に予告)
合意退職 労働者と使用者の合意による労働契約の解除
自然退職 定年、死亡、期間満了による労働契約の解除

法令違反による解雇(当然無効です)
国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇(労基法第3条)
業務災害での休業期間とその後30日間及び産前産後の休業期間中とその後30日間中の解雇(労基法第19条)
女子労働者の結婚妊娠出産を理由とする解雇(均等法第8条)
育児休業・介護休業の申出をしたことや取得したことを理由とする解雇(育介休業法第10条及び第16条)
労働組合に加入したこと、結成したこと、正当な組合活動を行ったことを理由とする解雇(組合法第7条)
労働基準監督署に申告したことによる解雇(労基法第104条)

■解雇の制限(法第19条)

■使用者が労働者を解雇してはいけない期間(解雇制限期間)

この規定は、解雇された場合に、労働者が次の仕事を探すことが困難になる危険性が高い一定期間について解雇を制限しています。ここで定められている解雇制限期間については、例外事由に該当しないかぎり、例え懲戒解雇事由に該当したとしても解雇することはできません

1.労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかりその療養のために休業する期間とその後30日間

(参考)
業務災害での休業のみが対象で、通勤災害私傷病での休業については含みません。
業務災害による休業が1日のみであったとしても、その後30日間は解雇することはできません。
業務災害で休業していた労働者が、完全に治癒したわけではないが、出勤して30日経過した場合は、例え業務災害による傷病で治療中であっても、この規定の適用はありません。
「その後30日間」の起算日は、傷病が治癒と診断され出勤した日、または出勤可能なまでに回復した日からです。
期間の定めのある労働契約をしている労働者が、労働災害による休業中に労働契約の期間が終了した場合については、この規定の適用はありません。ただし、期間の定めのある労働契約が何度か更新されている場合は、期間の定めのない労働契約とみなされ、この規定が適用されます。

2.女性労働者が産前産後休業する期間とその後30日間

(参考)
産前産後休業とは、出産予定日以前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)と出産後8週間の期間をいいます。
産前産後期間の途中で出勤しその後30日経過すれば、この規定の適用はありません。
産前産後休業期間とその後30日間が経過すれば現に休業中であったとしてもこの規定は適用されません。
産前産後期間中であっても休業せずに就業している場合は、この規定は適用されません。

解雇制限の例外(解雇制限期間中であっても例外的に解雇できる場合)
1.法81条の打切補償を支払った場合

※打切補償とは?
打切補償とは、業務災害により使用者から補償をうける労働者が、療養開始後3年を経過しても治癒しない場合に平均賃金の1,200日分を支払うことによりその後の労働基準法上の災害補償をする義務を打ち切る補償をいいます。

2.天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能になった場合で、その事由について労働基準監督署長の認定をうけた場合

■解雇の予告(法第20条)

解雇予告の原則
使用者が労働者を解雇する場合には次のいずれかの手続きをする必要があります。
30日以上前に予告する
30日分以上の平均賃金を支払う

(参考)
解雇予告と解雇予告手当を併用することも可能です。例えば10日前に解雇予告して20日分の平均賃金を支払うような方法も可能です。
解雇予告の期間は、解雇予告をした日の翌日から起算して解雇日の前日までに30日以上あることが必要です。
解雇予告手当についての平均賃金を算定すべき事由の発生日とは、労働者に解雇を通告した日となります。
解雇予告手当の支払いについては、解雇の申し渡しと同時に行わなければ、解雇の効力は生じません。

解雇予告における注意事項
1.30日前に解雇予告をおこなったが、本人の同意を得て、当初予定していた解雇日以後もそのまま使用した場合は、解雇予告は無効になります。

2.解雇予告や解雇予告手当の支払いをしない即時解雇については無効ですが、その即時解雇の通知から30日経過した後に解雇予告としての効力を有することになります。

3.解雇予告期間中に解雇制限事由(業務災害で休業する期間及びその後30日間及び産前産後休業する期間とその後30日間)が発生した場合で、解雇予告した解雇日が解雇制限期間中である場合は、予告した解雇日に解雇することはできません。
しかし原則として改めて解雇予告する必要はなく、解雇制限期間が終了した日に解雇することは可能です。

解雇予告の例外(解雇予告が不要な場合)
次のいずれかの事由に該当し、労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けた場合には、解雇予告及び解雇予告手当の支払いをすることなく解雇することが可能です。
天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能になった場合
労働者の責めに帰すべき事由に基づく場合

■解雇予告制度の適用除外(法第21条)

次に該当する臨時的に使用される労働者については解雇予告制度の適用が除外されています。
解雇予告の必要がない労働者 解雇予告が必要となる場合
日々雇い入れられる者 1ヶ月を超えて引き続き使用された場合
2ヵ月以内の期間を定めて使用される者 所定の期間を超えて引き続き使用された場合
季節的業務(清酒製造の業務や海水浴場の業務等)に、4ヵ月以内の期間を定めて使用される者 所定の期間を超えて引き続き使用された場合
試の使用期間中の者 14日を超えて引き続き使用された場合

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